2021年、50周年を迎える老舗人形劇団(しにせにんぎょうげきだん)プーク 。その幕開(まくあ)けとして、お正月期間(しょうがつきかん)の公演(こうえん)に選ばれた演目(えんもく)が「ねぎぼうずのあさたろう」です。原作者(げんさくしゃ)の飯野和好(いいのかずよし)さんもお気に入りという名舞台(めいぶたい)です。
2021年3月9日から開催(かいさい)する「飯野和好「ねぎぼうずのあさたろう」展(てん)」に合わせて、人形劇「ねぎぼうずのあさたろう」を脚色した、人形劇団プークの柴崎 喜彦(しばざき よしひこ)さんに、人形劇が生まれたお話やその人気のひみつをお聞きしました。インタビュー記事を数回にわたって掲載します。
🔊飯野和好「ねぎぼうずのあさたろう」展~おもしろきかな浪曲絵本~
2021年3月3日投稿
vol.1 人形劇の生みの親、早川百合子さん 3月8日
「ねぎぼうずのあさたろう」の魅力にいち早く気づき、人形劇化したのは、人形劇団プークの早川 百合子(はやかわ ゆりこ)さんです。彼女はあさたろう作者、飯野 和好(いいの かずよし)さんの絵本に衝撃を受け、「どこよりも早く、どうしても私たちが人形劇にしたい!」と劇団に提案したそうです。
「あさたろうが東海道(とうかいどう)を旅する生き方やチャンバラでたたかうシーンを子どもたちに見せる劇にしてよいのか、劇団には賛成と反対、両方の意見があった」と柴崎さんは話します。それでも早川さんはあきらめず、ねばり強くまわりを説得しました。
「飯野さんの絵、浪曲風にと指定がある文章のインパクトに、きっと舞台でもあさたろうはパワフルに活きると確信」した早川さんの熱意に、ついにまわりが動かされ、結果的に、あさたろうは早川さんがはじめて演出した作品となりました。
「愛と勇気、そして正義」をテーマに、江戸時代の雰囲気や魅力的なキャラクターが登場するあさたろうの劇に、大人も子どもも、あっという間に多くのファンがとりこになりました。
2021年のお正月公演もあさたろうが上演されました。なんと主役のあさたろう役には若手の俳優、小立 哲也(おだち てつや)さんが、またあさたろうときゅうりのきゅうべえがチャンバラで対決する、ハラハラドキドキの殺陣(たて)の場面は、2020年に劇団へ入ったばかりの佐藤 翔太(さとう しょうた)さんが任され、ともに堂々とした演技を披露しました。しかし、佐藤さんを選んだ早川さんは、残念ながらその舞台を見ることなく、2020年の秋に亡くなられました。ご冥福(めいふく)をお祈(いの)りします。
Vol.2 長年にわたり愛される名作に成長 8月5日
「ねぎぼうずのあさたろう」の原作者、飯野和好さんは、人形劇団プークの原作のていねいな再現をとても気に入り、股旅姿(またたびすがた)で三度笠(さんどがさ)を手に、劇場へ何度も足を運び、ファンのサインにも気軽に応じました。
劇の中ではくノ一のプークによるオリジナルのキャラクターも生まれました。2012年、中国の成都(せいと)で開催された第21回ウニマ大会・国際人形フェスティバルで「ねぎぼうずのあさたろう」を上演し、ついにあさたろうは海外公演も果たします。 ※ウニマ(UNIMA)=国際人形劇連盟のこと
江戸っ子気質のまっすぐさで悪に元気いっぱい立ち向かうあさたろうは、大人から子どもまで、多くのファンに愛され、2002年、厚生労働省により児童福祉文化財に選ばれました。今も2年~3年に1回ほど、各地で公演を続けています。日本で初めての現代人形劇専門の劇場として建設された東京・新宿のプーク人形劇場は2021年11月で50周年を迎えます。
いちかわ発見伝が2021年3月に開催した展示では、プークの協力により、あさたろうときゅうべえの人形もおひろめされ、多くの来場者がその迫力や、こまかなところまでよくできたつくりにおどろき、間近で観察していました。気になった方はぜひ劇場で躍動感あふれる人形たちの舞台をご覧いただければと思います。
取材協力・写真提供/人形劇団プーク